王国の軍は進軍の速度を緩めることなく帝国へまっすぐ向かってきている
帝国へ併合されていない西側の諸国はヒーローズが編成されていることで積極的には抵抗をしていない
友好国とは事前に侵略行為に対して以外は様子を見るよう取り決めてあった
王国軍は帝国の領土ギリギリまで迫ると即席の陣を張った。本格的な戦争に備えているようには見えない
そもそも王国が誇る全戦力を考えれば今回の進攻の戦力はかなり控えめである
「何を企んでるんですかね〜」
偵察から戻った鳥の使い魔から受け取った情報をエコーが皆に伝える
ヴィリスの睨みが効いているとは言え、やはりこちらへもたらされる情報は少ないか遅いかである。エコーの使い魔のおかげで帝国正規軍と遜色ない情報が得られるのは助かっていた
とは言え、王国軍の動きは意図が読みきれず不気味なままだ
軍議は定期的に開かれていたが、王国からの動きがない以上下手に手出しをするとどういった事態が起こるか予想できない
戦況を模した盤面をドラゴマンが見ていると、袖を引っ張られているのに気がついた
ランジュだった。傍には深刻そうな顔をしたスミスも立っている
「俺も信じられないのだが…」
意を決したようにスミスが口を開く
「獣の気配が…?」
ドラゴマンはそれ以上を口にするのをやめた。考えたくもないことだ
「これはもしかすると…俺たちのように獣の力を得た奴が…」
ドラゴマンが濁した言葉の先を受け取り、スミスは続けながら窓の方へ顔を向けた
アンドレイは落ち着かないようで部屋の中をうろうろしている
獣に関わっている者は一様に何かを感じているらしい
ふと思い出して石に手で触れてみるが、反応はないようだ
「ジェネライトの暴走がないとなると、スミスやランジュのようにすでに力を得ているのか」
ミントエーテルは元々王国が開発した霊薬である。自分が渡されているのが王国産のものなのか、どうやってか帝国で製造しているものなのかはわからないが、王国がエーテルを多用する可能性は高いだろう
ドラゴマンは考え込む
実際にこの目で見てみなければ獣の正体も、王国の狙いもわからないままだろう
「王国軍のところに出向くぞ」
ドラゴマンは仲間たちにそう告げた
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