昔から俺は周りと違っていた
俺は強かった
そんな俺を周りは称え、次のヒーローのひとりだと持て囃した
そういう空気になると逆に少し醒めてしまう自分がいる
王国軍でヒーロー候補を集めるという話になった時、俺は気が進まなかった
戦うことは嫌いではない
強さだけを称えられて育った俺は、それだけが自分の取り柄だと思うようになっていた
周りの誰が俺を嫌っていようが、戦えば俺が勝つ それが世界の理だと思っている
一つだけ気に食わないことがある
幼馴染のミシェルにだけは勝つことができていないことだ
ミシェルはこの世界が好きで、俺は嫌いだった
ミシェルは守るために戦い、俺は勝つために戦った
ミシェルは俺を構い、俺はそれを鬱陶しいと感じていた
ミシェルは王国軍のヒーロー候補隊に入隊すると言った
俺はそんな気はさらさらなかったので適当に生返事をしておいた
のだが
ミシェルが俺の親をそそのかし、勝手に入団の申請をした時は本気で決闘でも申し込んでやろうかと思ったが、戦うことだけを考えられる環境というのは悪くない気がしたので、渋々従うことに決めた
憂さ晴らしで決闘を申し込んでも、たぶん負けるのは俺だから
ミシェルと俺は候補隊の中でも抜群に強かった
定期的に開催される模擬戦の大会でも1位はいつもミシェルで、俺はいつも決勝で負けていた
そして候補隊の中ではたくさんの強いやつと知り合い、いつしか隊員同士という枠組みだけに収まらない仲間ができた
そして俺の醒めた感情がただの寂しさだったことに気づいて、少しだけ気恥ずかしくなった
今更キャラを変える方が恥ずかしいのでいつも通りに振る舞うことにした
そして、俺もミシェルも15歳を迎える年、あの事件が起こる
0コメント