「あれ…?」
リリアやガイの様子を見ながら立てた予測に反して、俺の体が光始めることはなかった
呆然としながら左手に目を移す
光は発していない
見つめたままの左手を握ってみる
まだ体は光らない
「何でだ!クソッ!何で…ッ!」
信じがたい…自分がヒーローになれない事実に冷静さを失い、憐れみを孕んだ目でこちらを見ながら祝詞の続きを読み上げている神官に怒りを覚えた俺は我を忘れて掴み掛かろうとした
両腕が掴んだのは空
視点が反転し、気づいた時には壇上に組み伏せられていた
普段なら負けはしないだろう神殿騎士ふたりに抱えられ、力なく立ち上がる
祝詞の邪魔をしないためだろう小声で、神殿騎士の内の一人が退場を告げる
少しだけ見下していたその他大勢の『ヒーローになれなかった者たち』と同じ足取りで、俺はふらふらと祭壇を降りていく
先ほどまで俺もいた神殿のフロアの方を向くことはできなかった
一瞬リリアの同情するような目が頭に浮かんでくるが、必死に振り払った
どこにも向けることができない怒りを、右手を握ることで抑える
リリアは一人で西側へ向かっている
王国民の感覚として、中央地方の魔物に対応し、その後大陸内の他の地方へ駆けつけるのが普通だろう
俺がいかなければリリアはひとりになってしまう…しかし今の俺に魔物と戦う力はない
できそこないが集う待機所に着く頃、俺の頭の中は怒りではなく絶望が支配していた
そしてできそこない達の俺を見る視線に気づくと、俺の意思は奥の方へ押しやられていった…
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