石工の青年は書斎の奥で見つけた見慣れない本を手に取った
先祖の秘伝の技術が記されたものかもしれない
本に吸い寄せられるように、青年は表紙を捲った
○/△ 城に呼び出されちまった…何かしでかしちまっただろうか、記憶にはないが…
細々石工をやっている俺が城に呼ばれるなんて一体何をやらかしたんだ…
息子もまだ小さい。斬首だけはどうにか免じてもらわねえと…
○/◇ 正直驚いた。お忍びで一度俺が仕事をしているところを通りかかったことがあって
俺の仕事をえらく気に入ってくれたらしい
別の意味でヒヤヒヤしちまったが、魔物との戦いで被害を受けた街の修繕が必要だからうちに頼みたいってことらしい
声はうわずっちまったが、こんな光栄なことはない
どうやら本の内容は当家の初代が書いていた日記のようだ
読み進めれば当時の仕事の様子がわかるかもしれない
青年は取り憑かれたように日記を食い入るように読み耽った
⭐︎/● 城の人手も借りて街の補修は思ったより早く完了することができた
息子も今は大事な戦力だ
仕事の始めにこんな大仕事に関われたことで、いい経験になっただろう
X/x 今度は城の修繕も頼みたいと城から使いがきた
ずいぶんと扱いが変わったもんだな
それはそうか、王家公認の石工屋になったんだ
王様への恩を返すために、最高の仕事をしなけりゃならない
x/X 石材屋との商談の時に同席していた悪そうな商人から、森の獣の噂を聞いた
獣のようりょく?魔力と似たようなそういうので、森の中に転がってる岩もそこいらの高級石材なんて目じゃないほど品質がいいらしい
商人と石材屋が護衛を雇ってその岩を探しにいくってんで止めたんだが、俺も実はその石材に興味が湧いちまった
最後の大仕事、王様へのご恩返しのためには最高の石材が必要だ
実際にこの目で見てみたい
俺は同行することにした
日記はこのページが最後となっている
森の噂は青年も耳にしたことがあったが、先祖が興味を持っていたことは知らなかった
そういえば、初代が姿をくらまし、その息子が若くして後を継いで家をさらに発展させたという話を聞いたことがある
初代の行方とその息子がどのように家を大きくしたのか
青年はますますこの件についての興味が強くなった
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