ヴィランズ帝国を目指して西へ向かっている
眠り姫を預かったと思ったら岩で覆われた大男に襲われ、眠り姫が虎娘になった
虎娘の暴走によって仲間が4人と隠れてついてきた幼い少年が死んだ
馬車も壊され荷物が重い
残った2人の仲間と大男、虎娘とドラゴマンの5人はオラン山脈の麓の村を目指していた
馬車が調達できればいいのだが、最悪背嚢でもいいだろう
王国で用意していた大陸の地図は立派な装丁に反して中央以外の地理はあっさりとしたものだった
「山脈を越える登山道の入り口が載ってるだけまだマシか…」
自分に言い聞かせるようになるべく前向きな意見を口にする
どうやら王国は中央以外を大陸と見做していないらしい
一般市民には西側の情報はちょっとした昔話と噂話程度しか流通していない
第二次魔獣災害の対応への遅れが問題とならないように西側の情報をシャットアウトしているようなやり方である
苦虫を噛んだような顔を少女に見せないようにと無遠慮に照りつける太陽を仰ぎ見て息を整える
ミントの儀のあの日以来、時々感情の揺れに釣られて暴走しかけることがあったのだが、恩人であるヴィリスから呼吸による精神統一を学び、心の平穏を保つことが上手くなった
と、落胆と怨嗟がバレていないとほくそ笑むドラゴマンの背中をランジュが不思議そうに見つめる
スミスは寡黙に歩き続けている
地図によると目的の村はすぐそこのはずだ
村から煙が立ち上り、不穏な空気が漂ってきたのは陽も沈みかけた頃だった
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