村だった場所へ足を踏み入れると、そこは話に聞く魔獣災害よりも人間同士の戦争の跡に近かった
逃げ惑ったのであろう村人たちは背中から斬りつけられたようだ
民家からは略奪の痕跡が残っている
異変に気づく前、王国へ続く大きい方の道を数台の馬車が走っていくのを見かけた
ドラゴマン達はなるべく人目を避けようと細い支道の方を進んでいたのでかち合うことはなかった
奴らの仕業だったとしたら、村へ向かうのを咎められ襲われでもしたかもしれない
しかし盗賊団にしては立派な馬車が並んでいたが、一体どういうことなのか?
ヒーローズの再誕により少なくとも中央の表面上は歴史上類を見ないほど治安が保たれている
そんな時代にあんな大規模な盗賊団が王国軍や治安維持軍、ヒーローズの目から逃れられるのだろうか…
ただの盗賊団ではないのかもしれない
ヒーローズを恐れぬその所業はドラゴマンの背筋を冷やした
ドラゴマンが真剣な面持ちで考え込んでいると、彼の服の裾をくしゃくしゃになるほど強く握っていたランジュが急に鼻をくんくんと鳴らして辺りを見回し始めた
耳もピンと立っている。何かが聞こえるらしい
「誰か…いる…泣いてる…」
不安そうにこちらを見上げて訴えてくるその目を真っ直ぐに見据え、ドラゴマンは頷く
彼らは村の奥の方へと進んでいった
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