村の家々の燃える熱で数メートル先の景色が歪む
ランジュの案内について先を進むドラゴマンは、つい先ほどまで営まれていた生活の痕跡を見回して言葉を失っていた
倒れている人々の眼は大きく見開かれ、未だそこに居座り続ける恐怖に慄いているようだ
「むごいな…」
スミスが一言呟いた。その眼は赤く爛々と光っている
ドラゴマンが頷くと同時に足元を雨粒が濡らす
空が痕跡を洗い流そうとしているかのように、すぐに激しくなった
普段は雨を嫌うランジュが、濡れることを厭わずに進んでいる。
鬼気迫る小さな背中を見つめながら歩いていると、唐突にランジュが立ち止まり、暴虐の嵐に晒されたボロボロの井戸の方を指さした
ランジュとあまり変わらないだろう年恰好の女の子が、煤や埃に塗れたまま立ち尽くして泣いていた
声を必死に抑えながら顔を両腕で交互に拭っている
こちらにはまだ気づいていないようだ
孤独に追い討ちをかけるような大雨に抗議するように顔を上げる少女
「何があった?」
そこへ辿り着いたドラゴマンは、雨音を気にせずに尋ねる
不思議とはっきりと聞こえた男の声にたじろぐことなく、少女は彼の目を真っ直ぐに見つめて答える
「みんな、死んだ」
わかりきっていたことだった
少女はもう泣き止んでいた
ランジュもスミスも目をそらさずに見守っている
心の中だけでため息をひとつ。面倒ごとにはもう慣れた
「これからどうするつもりだ?」
試すような言い方に自分でも嫌気がさすが、確認は必要だろう
身寄りがあるならば、そこへ送り届ければいい
「力が…欲しい…」
少女の口から出たのは、純粋な復讐心
その表情はかつて自暴自棄になっていた少し前の自分を思い出させた
「…身寄りがないなら、一緒に来い」
一瞬の沈黙を置き、ドラゴマンは踵を返して歩き出す
ランジュとスミスも心配そうに少女を見やったあと、ドラゴマンの背中を追った
いつのまにか雨はあがっている
雲の切れ間から再び差し込んできた夕日は、いつもより赤い気がした
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