妙にリアルに思えるのは、この悲劇からそんなに日が経っていないせいなのか、何度も何度も眠るたびに思い出してしまうせいなのか…
夢を見ているアムは、何度も何度もはやく悪夢から覚めることを願う
しかし今までその願いが叶うことはなかった
「ボエボエボエーーーーー」
ジニアとじゃれあっていると、唐突に背後から聞き慣れない音が聞こえる
ーー私はこの音を忘れない
アムが振り向くと、ヒーローたちが連れていたフェアリーがボエボエと繰り返しながら村の方へ向かっていくのが見えた
ーー私に戦う力があれば
アムは何が起こっているのかわからずぽかんとフェアリーの背中を見送っている
ーーここであいつを殺すことができていれば
ギュルルルルゥ〜〜〜〜
腕の中でジニアが唸っている
フェアリーを見送ったアムとジニアは洞窟の中で遊ぶことにした
洞窟の中には柔らかい藁が敷いてあり、きらきらとした石やガラス片などが落ちている
石を持ち帰ろうとするとジニアに吠えられるので、きっとこのキラキラしたものたちはジニアの宝物なのだろう
いつのまにか眠っていたようだった
ジニアの寝床はふかふかしていて気持ちがいいので、来るといつも寝入ってしまうのだ
眠い目をこすりながら洞窟から出ると、すでに夕暮れが空を染めている
今から帰っても家に着いた頃には暗くなっているだろう
日が暮れてからの帰りと藁がついた衣服を咎められるのを想像して苦々しい顔を浮かべたあと、アムはジニアに手を振りまた来るね、と約束した
ーーーその約束が果たされることはもう無いのだが
帰路を急ぐアムは村の方角の異変に気づく
黒い煙が立ち昇っている
胸騒ぎがする
さらに足を早めたアムは前方から数人の大人が走ってくるのに気づく
村の人たちで皆知った顔だ
しかしその顔には見たこともないような必死の形相を浮かべている
そのうちの1人ーーお父さんだったーーがアムに気づき、アムを抱きしめる
父親の腕にすっぽりと収まるアムに降りかかったのは、温かい液体だった
抱きしめられていたので顔を拭えない
父親の腕を解こうとみじろぎした瞬間、首のない体は力なくアムを押し倒したのだった
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