謁見②

アムはドラゴマンとヴィリスの会話をどこか上の空で聞いていた

(私の…ジェネライトの…色…)

村にいた頃に両親からはジェネライトは正義の心、言わば良心と教わっている

そんなジェネライトに色などあるのだろうか…ドラゴマンはなぜあんな驚きの表情をしているのか

アムがぼんやりと考えていると、退屈してると思われたのだろう。ネビュロがヴィリスに向けて咳払いをひとつ


そうだった。本題の続きだったな。とぽつりと呟き、玉座にもたれるよう姿勢を変えた

「魔獣災害以上の危機が大陸全土に迫っている。仔細はまだ言えぬが、戦力が必要だ。ヒーローズを超えるほどの強大な兵たちが、な」

ドラゴマンにとってどこか冷めた印象だったヴィリスが、皇帝として真剣に語った衝撃の内容

魔獣災害を超える大陸全土の危機…ヒーローたち以上の戦力が必要になるほどの…

スミスとドラゴマンは顔を見合わせるが、当然想像もつかない

ランジュとアムは事態が飲み込めずにぽかんとしている


「ドラゴマンよ、お前の力は我々帝国のどの兵にも勝るものだ。」

ヴィリスはドラゴマンを見据えたまま続ける

「あの日神殿で見たお前の姿は神々しく、恐ろしかった。力を持て余し絶命しかけたが、ジェネライトはお前を生かすことを選んだ」

「俺の力…?旅の中で何度も死にかけたくらいだぞ。ヒーローズに遠く及ばない」

「ジェネライトが覚醒していないのだ。そこにいる大男や小娘たちも同様に。そしてお前の仕事は、同じようにジェネライトが強すぎるが故に身を滅ぼしてしまうような者たちをここで兵とすることだ」

「つまり、こいつを使ってスカウトして来いってことか」

「察しがよくて助かるぞ」

クックと噛み殺すように笑うヴィリス

「ドラゴマンが戦力を整えている間、お前らはここで力を磨くがいい。戦いに備えるのだ」

スミス、ランジュ、アムは底知れぬこの皇帝の声に頷く

「まあ数日旅の疲れを癒すといい。あの部屋はそのまま使ってくれて構わぬ」

急に興味を失ったように冷めた表情に変わり、それ以来黙ってしまった

ネビュロがドラゴマンたちの元へ近寄り退出を促す


謁見の間から出ると、緊張で気づいていなかったが見事な調度品が目についた

「ずいぶんと豪勢な広間だな」

「魔獣災害によって壊滅寸前となった西側諸国も、ヴィリス陛下の手腕で周辺の国々をまとめあげ、ここまでの復興を果たしました。これはその時に接収した各王家の品々でございます」

胸を張るように仰反ったような姿勢で説明するネビュロ

「ヴィリス様の手腕がなければここにある貴重な品々も、いずれ失われていたでしょう。接収などと仰々しい言葉を使いはしましたが、これは西側の文化を保護する意味合いもあるのです」

スミスは石工の性なのか、彫刻や芸術品をまじまじと見つめている

アムは宝石などキラキラしたものに夢中で、ランジュは刀剣などの武器に興味津々のようだ


ふとドラゴマンが広間から繋がる通路のひとつに目を向けると、ランジュたちとそう変わらない年頃の少年と少し幼い少年が侍女を連れてこちらへ向かってきた

「ヴィリス様の御子息、ランス様とヴィスタ様です」

ネビュロがそっと耳打ちしてくれる

「そなたがこの帝国の兵を仕切ることとなるドラゴマンか。父上から話はよく聞いている。」

堂々と話している。さすがヴィリスの息子といったところか。皇室を継ぐ者としての教育は行き届いているようだ

弟のヴィスタはというと、少し虚な目で空を見つめている。冷たい瞳だ。こちらもヴィリスによく似ていた

「は、ランス殿下。精進します」

あまり固い言葉遣いに慣れていないのでどもりながらも手短に返事を済ます

「よろしく頼む。…いくぞ」

ヴィスタと侍女を引き連れて、ランス殿下は去っていった


ランジュが立派な刀剣に触れようとしていたので無言で引っ叩く

野生児は行儀が悪い。ランスを見習ってほしいもんだ…とぼやきとため息を心の中に収め、調度品に夢中な仲間達を現実に引き戻すのだった

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