「ヒヒ…これで3人目ですねぇ…」
「ジェネライトが弱すぎて話にならん。あのお方の望まれるような人間はいつになったら罠にかかるのだ…」
エクシドの村から東に2日ほどの小さな村で、派手な装備を身につけた4人組が話している
一見ヒーローのようなその外見で口からはみ出しているのは人間の指
「しかしあの本に書いてあった通りに行動するだけでこんなに上手くいくとはな…」
赤い鎧の男が片手で開いているのは、王国が先般出版した子供向けの絵本だった
ヒーローがドラゴンを討伐する逸話を子供向けにまとめたもので、その人気は絶大らしい
「それにしてもあの村、もったいなかったですね。金目の物も探せなかったし、鍋にぶちこんだ頭も食いそびれてしまった…」
頭髪を刈り上げた魔法戦士風の男が床に転がる死体の臓物をいじくり回してため息をつく
「何だかよくわからんが、留まるのは危険だと意見が一致しただろう。今更とやかく言うな」
指揮官らしい装備を纏う男が一喝し、禿頭は憮然として黙り込んでしまった
「この本を参考にヒーローになりすまし、噂を聞きつけてやってきた人間の中からジェネライトの強い者を我々の軍勢に取り込む。それがあのお方から仰せつかったご命令だ。基準に満たない者はこうして我々で頂くことも許されているのだ。村の1つや2つどうとでもなろう」
青い鎧の男がガハガハと笑い、骨をバリバリと噛み砕く
こいつの食い方は汚くて敵わん…と禿頭は顔をしかめた
「それにしてもあのドラゴンは高く売れましたね」
禿頭が青い男から視線を外すように話題を変える
あの日彼らは尽きかけた資金と食糧を補給するためにあの村を襲った
以前から神獣であるドラゴンの伝説に注目し、その財宝を狙っていたのである
子龍を捕獲し、略奪と捕食の前に戯れに村を壊して回っていると、本能が迫る危機を告げた
戯れもほどほどに、近づいてくる嫌な予感から逃げるように村を去ったのだ
その後王国近辺で会った怪しい商人にいい値段で子流を売りつけることに成功した彼らは、ヒーローの威を借り好き放題してきた
とはいえ王国領のど真ん中で騒ぎを起こすほど自分たちは馬鹿ではない
そして考えついたのが、弟子を集めると触れ回る今回の作戦だった
しかし噂に釣られてやってきた今までの3人のジェネライトは到底ヒーロー化には及ばず、配下に加えても使い物にならなそうな人間ばかりだった
そのたびこうして腹は膨れてはいるのだが
そんなことを知らず、決死の覚悟でこの村に辿り着いたエクシド
ーーーそしてその住処のドアを叩いた
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