王都の裏通り
ここは表の市場では流通しないような品物が売買される
形の崩れた農作物、銘刀の柄、割れた宝石など
ガラクタが流通する、裏市場
しかし陽の当たらないこういった場所では後ろ暗い品々も闇に紛れて売買されている
亞人の奴隷、魔剣、曰く付きの宝石など
中でも一際珍しいのは何といっても魔獣だろう
そんな希少な魔獣を専門に扱う奇特な商人がいた
今日の裏市場は彼の仕入れた商品の話題で持ちきりだ
「御免。貴殿が魔獣の商人か?」
彼の目の前に、おそらく王国騎士団の中でも上位職であろう立派な装備で身を包んだ男が3名
どう見てもこの裏市場の雰囲気に見合わない人種だ
「アンタがたのような表の人たちが来る場所じゃないですよ。ここはね、貧乏人と弱者のための市場なんだ。そんなビカビカした格好でうろつかれたら商売あがったりなんですよ、騎士殿」
もともと細い目をさらに細め、男たちを射殺すような眼光を向ける
「私はこの裏通りの出身だ。生まれた場所にいて何か問題でもあろうか?」
商人の視線をいなすように顎をあげ、見下ろして言う
「ヒヒ…まあいいでしょう。で、アタシに何か御用ですかい?」
どうでもいいことのように用件を聞く
今日ここに来たのはどうせアレの件だろう
「貴殿の品物の中に、子龍がいるという噂を聞いてな。そいつを買い上げたいのだ」
やはり、と思った
ヒーローの格好をしているがどこか胡散臭い4人組
彼らも自分の噂を聞きつけて、子龍を売りつけに来たのだ
しかしどんなに立派な鎧で身を包んでいても、匂いだけは誤魔化すことはできない
彼は鼻がとても利く
(大きな何かが動いてますね…商売のチャンスか、はたまた世界の危機か…いずれにしても儲けさせてもらいましょう)
内心ほくそ笑み、商売用の笑顔に切り替える
「はいはい、ございますよ。世にも珍しい、ドラゴンの幼体でございます。」
2トーンほど上がった商売用の声に気圧される鎧の男
(商会しか相手にしないような成金騎士さん…こんなところで買い物しようなんて二度と思えないようにしっかり巻き上げさせて頂きますよ)
そして商談が始まった
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