「おいジェイ!生きてたのか!」
聞き慣れない声がする方を向くと、やはり見慣れない男が駆け寄ってくる
心配してくれているようだが、相手もなかなかにボロボロだ
どうやらこの男とジョニー(今はジェイと呼ばれているらしい)は共に何かと戦っていたところのようだ
「流石は救世のヒーロー様ってところか…」
男が構え直す方向へ目を向けると、空から1人のヒーローが降り立つところだった
白い鎧、白い髪、そして異様に白い肌。右腕だけが深い濃紺と紫が混ざったような禍々しい色をしており、不気味さを強調しているようだ
「空気が薄くて敵わんな…瞬殺されて天国にいっちまっても気づけないかもしれん」
最高の冗談を言った後のような清々しい顔をこちらに向けてくる男。知らんがな。
必死に状況を理解しようとするのだが、何もかもわからないので理解が追いついてこない
とにかく目の前の脅威が敵であることだけはわかったので、傍に落ちていた両刃のバスターソードを拾いあげた
「おいジェイ…お前剣なんて扱えるのか…?」
驚きをもってかけられた言葉の意味がわからず、無視して構えようとすると、重い…
重心が定まらず、振ることも攻撃を受けることも、これでは難しいだろう
(どういうことなんだよわけわかんねえ何なんだ)
「前衛はいいからお前は下がって撃ち続けろ!」
混乱するジェイを一喝し、前に出る男
(撃つ?撃つって何を?)
余計に混乱するジェイ
「チッ…頭でも打ったのか?」
忌々しげに言われても困る。何より自分が頭を打ったのか聞きたいのはジェイの方だった
敵はというと悠長にこちらの会話が終わるのを待ってくれていたようだ
「お話しは終わった?もういいかな?お腹、ペコペコなんだ」
白いヒーローは剣を持っていない左腕をゆっくりと持ち上げる
魔力の高まりは感じないので、魔法を撃とうしているわけではなさそうだ。…今まで感じたことないけど
訝しんだまま構えていると、かざされた左の手のひらが光った
反応しきれなかった。何より奴の顔に気が向いてしまっていた
何かを放つ瞬間にジェイが見たのは、人間ではありえないほどに裂けた口で楽しそうに笑う、奴の不気味な笑顔だった
魔力の集中も感じないのに、奴は何かを撃った。魔法ではないのかもしれない
しかしジェイは生きているようだった。一体何を…
見回しかけたその時、視界の端で何かが倒れた
先ほどの男が首から上を失い痙攣している
名前すら聞いていなかったことをほんの少し後悔する
「そっちのアンタさ、さっき何かあったでしょ。ボクがこっちに吹っ飛ばしたあと。ジェネライトがギューーーーンってなったの感じたんだけど」
さっきから理解できないことだらけだ。誰か解説してくれ…
「面白そうだから、食べてみたいなーと思って…チッ…また邪魔しにきたの?」
言葉を途中で止め、奴が振り返る
遅れて目を向けたジェイの目に映ったそれは、吸い込まれそうなほどに黒い流星のようだった
0コメント