悪意の刃②

漂う死の気配

何年も人の手が入っていないはずの城門は固く閉ざされ、久方ぶりの来客を阻む

本当に億劫なことだ、と心の声が漏れてしまう

「魔力ですなァ。お知り合いの帝国のお偉いさんに破城槌でも持ってきてもらったらどうです?」

エコーは心底楽しそうに揶揄うが、できることならドラゴマンもそうしたいくらいだった

もっとも、魔力に守られた頑丈な城門を普通の攻城兵器で破ることができるのかは甚だ疑問ではあったが


腕組みをして途方に暮れているドラゴマンの目の前に、突如真っ黒の物体が降ってきた

音からするとかなり重いものだろう

見上げるとエコーの相棒である黒き獅子が戻ってきていた

「ご苦労さん」

ドラゴマンは一言獅子を労うと、獅子が持ち帰ったそれを調べるためにしゃがみ込んだ

敵の死体である。とはいえ、もう何年も前から死体ではあったらしく、骨が鎧を纏っているようなものだった

土煙をあげてこちらへ近づいてきていたのは、この城に住むアンデッドの軍勢だったのだ

「こいつらが出入りできるってことは、やはりどうにかすればこの門をこじ開けることはできそうだな」

ドラゴマンは死体を調べながら呟く

獅子は既に姿を消し、エコーは門の扉を調べていた

その時だった

巨大な地震のような振動と地鳴りを伴い、扉が動き始めたのだ

ドラゴマンがエコーの方を見ると、動揺で顔を青白くさせながらブンブンと首を横に振っている

どうやら勝手に開き始めたらしい

ゾリ…ゾリ…と重いものを引きずるような不気味な音と共に現れたのは、全身を甲冑で包んだ騎士だった

「門番殿でしたか。こりゃ好都合」

エコーの軽口がうつってきているのかもしれないな、と頭の中で自嘲し、剣を構えた

獅子が蹴散らした雑兵とは比にならない強さだろう

「旦那、どの子がお好みで?」

「大事なお友達を無駄にするな。お前が前に出ろ」

ドラゴマンの冷たい言い方にヒッヒと愉快そうな笑いで答え、エコーは手にした太い鞭をゆっくりと伸ばした

「戦いながら中へ移動する。このチャンスを逃せば中にもう入れないかもしれん」

「えーと…それって出れなくなる可能性もあるんじゃ…」

「その時はその時だ」

答えになっていない答えを残し、ドラゴマンは走り出す

「つまり無計画ってやつですね…ほんとまったく旦那って人ァ…」

騎士の脇を全速力で走り抜けていくドラゴマンの背中を見送り、エコーも走り出す

騎士は一呼吸遅れてドラゴマンの方へゆっくりと振り返り、門の中へ戻っていく

「おいおいおいおい…アタシのことは無視ですかい…」

足を速めるエコー

そして門は音を立てて扉を閉じていく

「え、あの…締め出された…?」

PixelHeroes妄想ストーリー

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