ズン、と腹に響く音をたてて扉は再び閉じてしまった
内側で待ち伏せる敵にも警戒していたが、その心配は無用だったようだ
騎士はゆっくりとした足取りでこちらへ迫ってきている
「エコーの野郎、間に合わなかったな?」
舌打ちと共に2本の剣を構えると、騎士も緩慢に立ち止まって大剣を構えた
魔力によって動いている鎧だ。先ほど獅子が持ち帰った死体と同じ原理だろうが、ヒシヒシと漏れ出る魔力はその比ではない
エコーも外に締め出されてしまった以上、あまり時間はない
悠長に戦いを楽しんでいる暇はないか…
振り下ろされた大剣を避けながら、ドラゴマンは少しだけ残念に思った
「あーあ…どうすんすかこれ…」
一方、締め出されたエコーは目の前で閉じた扉に触れながら茫然としていた
ドラゴマンのことだから心配はしていない。一番憂鬱なのは、戻った彼に叱られることだろう
ほんの少しだけ、扉がもう開かないことを祈ったかもしれない
その時、規則正しい足音が数人分聞こえ、エコーの祈りは中断させられた
「運のいい旦那…じゃねえ、運の悪い奴らだ。アタシがここに残る理由、頂戴しますぜ」
近づいてきたアンデッドの雑兵の首をいくつか一気に打ち飛ばしたあと、にやけ顔で独りごちた
大雑把な動作で振り下ろされた大剣を避けた後、魔力が集中している頭部目掛けて剣を振るう
斬撃を受けて都度仰反る騎士だが、あまりダメージは受けていないように見える
騎士はゆっくりだが確実に攻撃を繰り出してくる
鎧そのものを壊すまで、こいつは止まらないかもしれない
「無駄撃ちしたくないんだがね…」
埒が明かないと見たドラゴマンは、奥の手を使うことに決めた
幼馴染の彼女と似た姿をしたあいつとの戦いの後に目覚めた力
魔力ではなくジェネライトそのものを活性化させる
その力を鋒に纏わせ、斬撃そのものを飛ばす
濃い紫色の斬撃が騎士の兜を弾き飛ばすと、やがて糸が切れたように地面に崩れ落ちた
少しの間敵の再起を警戒していたが、動きはないようだ
改めて門の中を見回すと、広場の奥に城の入り口が見えた
石の反応が強くなっているが、もはや石の力を借りずともその強さを感じ取れるような気さえする
一体何があるというのか…アンデッドの強襲も考え、剣を収めず、構えたまま中へ入っていくドラゴマン
そして玉座の間へ辿り着いた
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