「ドラゴマン殿、入室!」
門兵が中に知らせるための銅鑼を打ち鳴らし、巨大な扉を押し開きながら叫ぶ
だだっ広い謁見の間を奥に進み、中程まで来て跪く
「いつもいつも儀礼に従わせてすまないな」
微塵も感じていなさそうに足を組んだままのヴィリスが言葉をかけてくる
ドラゴマンはそれを合図として顔をあげた
今日はヴィリスの子らーーランスとヴィスタの姿もある
「ーーして、何か?お前の連れを鍛えろと?」
「以前に陛下は魔獣災害をも上回る災厄が近いと仰せでした。私は今お預かりした石の力でジェネライトの反応が強い者を集めています。陛下の勅命にて」
ふむ、とだけ発し、続きを促すヴィリスだが子供達は初耳だったようで互いに目で何かを語り合ったようだ
ーーー以上、と成り行きを説明し終え、ドラゴマンは兵力増強についての提案を終えた
しばし無言で勘案していたヴィリスは足を組み替え、条件を出す
「よかろう。たしかにランジュといったか…彼の娘や岩の男に対しては我が兵や騎士では手が出ぬようだ」
ネビュロからも報告があがっているのだろう。ドラゴマンが関わった者たちは通常の兵とは比にならないほどに強い
そして今回連れ帰ったアンドレイとエコーについても同様だ
「貴様は引き続き大陸内でジェネライトの反応の強い者を集めよ」
「仰せのままに…しかし陛下。陛下が恐れている災厄とは一体…」
「今はまだ言えん。臣民や兵に混乱が起きてもつまらぬ。貴様の兵が集まり、如何なる危機にも立ち向かえるほど士気が高まれば伝えることとしよう」
「…は」
いつもと変わらぬ返答ではあったが、もしかすると少しヴィリスにも焦りが出ているかもしれない
次の段階の話が聞けたことで与えられた目的にも意味が見出せる
謁見を終え部屋に戻ったドラゴマンは仲間達に謁見での話を伝えた
「アム、お前はまず魔力について学ばなければならん。実戦での訓練はまだ早いが…教師たちの言うことをよく聞いて力の使い方を覚えろ」
「そうすれば夢の中みたいにあいつらに復讐できる?」
この年齢の少女にしては随分と深く、暗い声でアムは確認するように質問を重ねてきた
「ああ…そうだな」
あまりにも達観した少女の言葉に少しだけ哀れみを覚え、言葉少なに肯定してやる
「俺は明日にでも北へ発つ」
ドラゴマンはそれだけ伝えると、部屋を出ていってしまった
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